井戸ポンプの交換を検討する際にまず気になるのは費用でしょう。井戸ポンプの交換費用は井戸の深さやポンプの種類によっても異なります。そのため、ここからは井戸ポンプの種類や交換方法について簡単に紹介してから、交換にかかる費用の相場について解説します。
井戸ポンプは、動力の違いに着目すれば、手押しポンプと電動ポンプに分かれます。手押しポンプはその名の通り、ポンプに付いたハンドル部分を手で押して使うポンプです。ピストン運動で真空状態を作り、大気圧を利用して水を吸い上げます。
手押しポンプは手動かつ大気圧を利用する仕組みなので、地下10mほどまでの浅井戸でしか使えません。手動で水を汲み上げるため、停電時にも使えるメリットがありますが、大量の水を汲み上げるには多大な労力が必要となります。
電動ポンプは電気の力で動くポンプです。使用するために電力を供給する必要はありますが、蛇口をひねるだけで水が出てくるので使うのにほとんど労力がかかりません。大量の水を汲み上げやすいので、ガーデニングや畑仕事に井戸水を使いたい方にも向いています。
設置する井戸の深さに着目すると、浅井戸ポンプと深井戸ポンプに分かれます。浅井戸ポンプは地下10mほどまでの浅い井戸に使われるポンプです。手押し式ポンプのほか電動ポンプも使われます。
一方、深井戸ポンプは地下30mなど地下深くまで掘られた井戸に使われるポンプです。深井戸ポンプは地下水に圧力を加えて水を汲み上げるジェット式と水中のポンプが水を押し上げる水中式の2つに分かれます。
ジェット式ポンプは、水中式に比べて運転音が大きく、消費電力が高いですが、さまざまな深さの井戸で使いやすく汎用性が高いタイプです。水中式ポンプは、運転音が小さく省エネで、汲み上げられる水量も多いメリットがありますが、井戸によっては設置できません。
井戸ポンプの交換方法は、ポンプの種類によって大きく異なります。
浅井戸ポンプは、深井戸ポンプと比べれば簡単に交換できます。既存のポンプと同じメーカーの後継機種と交換するのであれば、配管しなおさなくとも、ポンプを付け替えるだけで交換が完了する場合もあります。別のメーカーのポンプと交換するのであれば、ポンプの付け替えだけでなく配管のやり直しが必要となります。
深井戸ポンプの交換は、既存のジェットや水中ポンプの引き上げが必要となり、かなりの重作業です。また、配管の交換と新しいジェット・水中ポンプの取り付けも行います。深井戸ポンプの交換作業は手順が複雑で、作業に当たっては専門的な知識と経験が必要となります。
井戸ポンプの交換費用を節約したい方の中には、交換作業を自分でできるか気になっている方もいるかもしれませんが、基本的に自分での交換はおすすめできません。交換作業に失敗した場合、井戸を使うことができなくなったり、井戸の掘り直しが必要になったりすることもあるからです。
また、井戸ポンプと配管の接続がうまくできていないと、井戸ポンプの寿命を縮めてしまうおそれもあります。そうなると結局余計に費用がかかってしまうことになります。特に深井戸ポンプの交換を自分でするのは困難です。井戸ポンプの交換は基本的に専門業者に依頼しましょう。
浅井戸ポンプの交換費用は10万~25万円ほどが相場です。内訳は以下の通りです。
浅井戸ポンプの交換でも、古いポンプと別のメーカーのポンプに交換するなどして新しく配管が必要な場合には追加費用がかかります。
深井戸ポンプの交換は井戸の深さによって費用が変動します。総額20万~25万円ほどで交換できたケースもありますが、正確な費用は実際に井戸を見て見積もりをしなければ分かりません。深井戸ポンプの交換に必要な費用の項目は以下の通りです。
深い井戸の場合はそれだけ配管の原材料費もかかります。配管の原材料費は、塩ビパイプが20mで40,000円、保温材が20mで10,000円、消耗品が1,000円~2,000円が相場です。深井戸ポンプの本体代は8万円~20万円ほどになるでしょう。見積もりを取る際には複数の業者から見積もりを取って、比較検討してみましょう。
井戸ポンプの寿命はおおむね決まっており、交換時期の目安となる症状もあります。耐用年数が近付いてきている場合や、以下で紹介する症状が出てきている場合は、新しい井戸ポンプへの交換も検討してみましょう。ここからは、井戸ポンプの寿命と交換時期の目安について解説します。
井戸ポンプの寿命は10年~15年ほどです。井戸水の水質や井戸ポンプの使用頻度、メンテナンス具合によって寿命は変動し、短いケースだと5年ほどで壊れてしまうこともあります。
井戸ポンプが古くなってくると、経年劣化で内部の部品が破損して漏水が起きたり、モーターの劣化によって動作音が大きくなったりするなどの症状が現れます。放置すると井戸ポンプの故障がひどくなり、井戸が利用できない状態になりかねません。井戸ポンプの寿命を告げるサインは無視しないようにしましょう。
井戸ポンプの交換時期の目安となるサインや症状は以下の通りです。
なかには必ずしも井戸ポンプが原因ではない症状もありますが、いずれにせよ業者への相談が必要です。ここからはそれぞれのサインや症状について原因や対処法などを詳しく解説していきます。
10年以上使用している井戸ポンプに不具合が出た場合は、部品交換や修理をするよりも新しいポンプに交換してしまうのがおすすめです。
井戸ポンプは10年ほど使用すると故障や不具合が増えてくるため、修理をしたとしてもまたすぐに別の不具合が発生する可能性が高いからです。そうなると修理依頼を出し続けるのに手間がかかり、費用もかさんでしまいます。
また、井戸ポンプの中には製造を打ち切ってから8年ほどで部品の保存期間が切れる製品もあり、修理しようと思っても部品がない場合もあるかもしれません。長く使っている井戸ポンプなら修理するよりも思い切って交換してしまう方が、手間も費用も節約できます。
出てくる水の量が減ったり、水が出てこなくなったりするなど水量が安定しない場合は、井戸ポンプに不具合が起きているのかもしれません。または、配管から漏水していて水圧が低下していたり、砂やごみなどがポンプに詰まっていたりすることも原因として考えられます。
また、井戸自体に原因があるかもしれません。特に浅井戸は降水量や近隣の河川の流量に影響を受けて、水位が大きく変わることがあります。或いは、近隣で行われる土木工事などの影響を受けて、水位が変わったり水が枯渇することもあります。井戸が枯渇してしまった場合は井戸の掘り直しが必要です。
いずれにせよ、井戸の水量が安定しなくなった時に一般の方が原因を突き止めるのは簡単なことではありません。水量が安定しない状態が続いているなら早めに業者に相談しましょう。
井戸ポンプの運転中に金属が擦れるような異音がしたり、運転音が大きくなったりしている場合は、ポンプの交換時期が来ているのかもしれません。ポンプのモーターが劣化していて、モーターが回転する時に部品がこすれ合っている可能性があります。
水が問題なく出ている状況であっても、モーターの劣化を放置すれば、遠からず水を汲み上げられなくなります。異音は長い間使ったポンプに起こる寿命のサインです。音だけの問題だからと無視をせず、まずは業者にポンプのチェックを依頼しましょう。
井戸ポンプから水漏れしている場合は、2つの原因が考えられます。1つは、気温が低い日に凍結したことによるポンプの破損です。もう1つは、ポンプ内部の部品の経年劣化による破損です。
水漏れしている箇所によっては応急処置をして一時的に漏水を止められますが、あくまで応急処置に過ぎません。業者と相談して早めにポンプの交換を検討しましょう。
井戸ポンプを使っている途中に電源が落ちる場合は、2つの原因が考えられます。1つは、井戸ポンプと他の家電を併用していて、負荷がかかりすぎているということです。電気の使い過ぎに心当たりがある場合は、他の家電の使用を一旦止めて負荷を下げた状態で様子を見てみましょう。
もう1つは井戸ポンプの漏電や故障です。特に電気の使い過ぎでもないのに電源が落ちる場合は、漏電などが発生しているのかもしれません。特にポンプの周囲に草が茂っている場合は漏電しやすくなります。漏電を放置すると危険なので、なるべく早く業者に連絡を取りましょう。
また、漏電を自分で直そうとするのは感電の危険があり、大変危険なので絶対にやめてください。
井戸ポンプについての情報を調べている方の中には、井戸ポンプを新規で設置して自宅でも井戸を使えるようにしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。井戸ポンプの設置には以下のメリットがあります。
井戸ポンプの設置を検討するなら、まずはメリットを確認しておきましょう。ここからはそれぞれのメリットについて詳しく解説します。
井戸水を利用すると水道代の節約になります。生活で使う水を完全に井戸水に置き換えなくても、一部を井戸水でまかなうことで、水道の利用料金を抑えられます。ガーデニングや畑仕事などに大量の水を使う方にとっては大きなメリットとなるでしょう。日常的に井戸水を使う分には電動ポンプの電気代しかお金がかかりません。
ポンプの設置費用やメンテナンス費用なども見積もって、コストパフォーマンスは総合的に判断する必要がありますが、日頃から水を多く使うのであれば井戸ポンプの設置を検討してみるのもおすすめです。
地下から汲み上げただけの井戸水は水道水のように塩素消毒されていないので、カルキが含まれない水を利用できます。水質検査で飲用に適しているという結果が出た場合に限りますが、カルキ臭のしない水が飲めるため、水道水の味が苦手な方でも飲みやすいでしょう。
浅井戸の水は地層によるろ過が十分でなく飲用に適していない場合が多いですが、深井戸の水なら飲用できる場合もあります。定期的に水質検査をして安全性を確認し続ける必要はあるものの、日常的においしい水を飲めるのは井戸ポンプを設置するメリットの1つです。
井戸水なら、災害時に水道が断水していても水を使える可能性があります。地面に対して平行に走っている水道管は地震の影響を受けやすいですが、垂直に掘られている井戸は影響を受けずに無事に使える場合もあるからです。災害では水道の復旧まで長い時間がかかることもあるため、水だけでも普段通り確保できる井戸は心強い存在です。
例えば、2024年1月に発生した能登半島地震では、5月31日の時点でも1800戸以上で断水が続いていました。また、断水が解消されたと発表された地域でも、住宅につながる給水管が修繕できずに水道が使えないままの世帯も少なくありませんでした。
地域によっては長い間断水が発生する可能性もあることを考えれば、自宅で井戸を使えるようにしておくことは有効な防災対策の1つです。
メリットも多い井戸ポンプですが、以下のデメリットもあります。
井戸ポンプの設置を検討する際には、メリット・デメリットの両方を考慮したうえで判断することが大切です。ここからはそれぞれのデメリットについて詳しく解説します。
井戸ポンプの設置やメンテナンスには費用がかかります。新しく浅井戸を作るには約20万円以上、深井戸は100万円弱の費用が必要です。井戸ポンプが古くなって交換が必要になれば、上述したような交換費用もかかります。
また、井戸水の用途によっては水質検査費用も考慮しておかなければなりません。個人が利用する井戸であっても、飲用や浴用に井戸水を利用する場合には、健康被害を防ぐために水質検査をすることが推奨されています。
新設した井戸が飲用に適しているかを調べる水質検査には詳細な項目の検査が必要で、20万円ほど費用がかかる場合もあります。また、井戸の水質は変化する可能性があるため、飲用や浴用として利用を続ける場合には定期的な水質検査が必要です。
このように井戸を使える状態にするには井戸ポンプを含め、初期費用やランニングコストが必要となります。井戸の使用状況によっては、水道代を節約した金額よりも井戸の維持費の方が高くなってしまうかもしれません。経済的な理由で井戸ポンプを設置しようとしている方は、節約できる金額と費用のバランスも考慮してみてください。
井戸水は必ずしも飲用や洗濯に使えるほどきれいではありません。水質検査の結果次第では希望する用途で利用できない可能性があります。特に浅井戸の場合は土壌汚染の影響を受けやすく、水質が安定しないこともあります。
個人が利用する井戸に関しては、水質検査は義務ではありませんが、井戸水を飲用・浴用に使用する場合は検査が推奨されています。検査をして病原生物や有毒物質が基準以上に含まれていたら飲用・浴用には使えません。もちろん、水質検査をしないまま井戸水を人体に使用するのも危険です。
水質によっては洗濯用水にも使えない場合があります。比較的きれいだとされている深井戸の水であっても鉄やマンガンを多く含んでいるものがあり、洗濯用水として使うと黄ばみや黒ずみの原因になることもあるからです。
従来問題なく使えていた井戸水であっても、水質が変化する場合もあり、定期的に水質を検査しながら使っていかなければなりません。期待通りの井戸水が得られない可能性も念頭に置きながら、井戸ポンプの設置を検討しましょう。
なお、ガーデニングや畑仕事、トイレなどの用水として井戸水を使いたい場合は、必ずしも水質検査は必要ありません。水質検査をせずに井戸水を使っている家庭も多くあります。人体や洗濯物に影響の出やすい用途で井戸水を使う予定がないならあまり水質を気にしなくてもよい場合もあります。
電動ポンプのみを設置している場合には、停電時に井戸が使えなくなります。災害時に断水していても水が使えることが井戸のメリットの1つではあるものの、同時に停電も発生するとメリットが帳消しになる可能性があるので注意しましょう。
大規模な災害では電力の復旧にかなり時間がかかるケースもあります。例えば、2024年1月に発生した能登半島地震では大規模な停電が発生し、約9割が復旧するまでに1ヵ月ほどの期間を要しました。災害時に井戸を使うことを想定するなら、停電が長引くことも考えておいた方がよいでしょう。
電動ポンプと合わせて手動ポンプを併設したり、非常用の予備電源を用意しておくと、停電時にも井戸が使えるようになります。いずれにせよ設備を用意する費用がかかるので、予算と相談しながら対策を講じましょう。
井戸ポンプの設置を検討していると、井戸水と水道水(上水道)は何が違うのか気になる方もいるのではないでしょうか。井戸水と水道水はそれぞれどのようにできているかも異なり、多くの違いがあります。
井戸ポンプを新しく設置するかどうか検討するためにも、井戸水と水道水について改めて基本的なことから確認しておきましょう。ここからはそれぞれの水の作られ方などを紹介しながら、両者の違いについて詳しく解説します。
井戸水は地上に降った雨や雪が地層を通過するうちに土や石でろ過された水です。地層は水を通しやすい帯水層と粘土質で水を通しにくい不透水層に分かれています。井戸水として利用するのは、不透水層の上に溜まった水です。
井戸水は地下の浅いところにある不圧地下水と深いところにある被圧地下水に分かれます。浅井戸で汲み上げられるのは不圧地下水で、通過している地層が少なく十分にろ過されていない場合もあるため、飲み水にはあまり使われません。多くの場合は農業用の水や洗濯用水などに使用されます。
深井戸で汲み上げられるのは水に高い圧力がかかっている被圧地下水です。多くの地層を通り繰り返しろ過された水であるため、成分に問題がなければ飲用に使える場合もあります。浅井戸の水とは異なり、土壌汚染の影響も受けにくいため、長年にわたってきれいな水を使いやすいと言えます。
井戸水が水道水と異なるのは、水質や水量が井戸によってさまざまだということです。そのため、災害時に水を使いやすかったり、水道代がかからなかったりするメリットがある一方で不確実性もあります。用途によっては定期的な水質検査によって安全性を確認しながら使い続ける必要もあるでしょう。
そのほかに異なる点としては、水温があります。井戸水は地上近くに設置された水道管で送水されてくる水道水とは異なり、地下深くから汲み上げるため水温が安定しています。そのため、夏に冷たく、冬に冷えすぎないほどよい温度の水が1年中手に入ります。特に深井戸は水温が安定しており15~17℃ほどです。
水道水は河川や池・湖の水や雨水、地下水などを浄水場で処理することによって安全性を確保した水です。水を処理する方法は複数ありますが、日本の多くの水道水は、「急速ろ過法」という短時間で水を浄化する方法で処理されています。急速ろ過法の主な工程は以下の通りです。
日本の水道水には安全においしく水が飲めるよう厳しい水質基準が定められており、嫌な味やにおい、着色だけでなく、細菌や発ガン性の疑いのある物質も規制の対象となっています。日本の水道水は、水道水質基準に適合するものでなければならず、水道法によって検査も義務付けられています。
水道水が井戸水と異なるところは、厳格に安全性を管理された水があまり設備投資やメンテナンスをしなくても安定的に供給されてくることです。自分で水質検査を依頼する必要もなく、手軽に利用できます。
しかし、安全性が確保されている反面、消毒のために水道水に残留させている塩素が、有機物やアンモニアなどと反応していわゆる「カルキ臭」を発生させることもあります。そのため、水道の水の味が苦手という方も少なくありません。また、水道の利用には料金がかかるため、利用する水の量によっては家計の負担となります。
地面に対して平行なかたちで水道管を張り巡らせて水を供給している以上、地震などの災害の影響を受けて断水しやすいのも水道水の特徴です。水道水だけを利用し続けると非常時に水の確保に困ることもあるかもしれません。
今回は井戸ポンプの交換費用や交換時期の目安などについて解説しました。井戸ポンプの耐用年数はおよそ10年~15年です。長年使っていたり、不調・トラブルが発生している場合には交換も検討しましょう。交換費用は井戸の深さや井戸ポンプの種類によっても異なるため、詳しくは業者に見積もりを取ってみるのがおすすめです。
また、新しく井戸ポンプを設置しようとしている方は、メリットとデメリットの両方を理解した上で設置の判断をしましょう。井戸は災害時に断水していても使える場合があり、水道代の節約にもなるので見直しが進み、自宅で井戸を新しく使えるようにしたいと考える方も増えています。
しかし、井戸ポンプの設置費用やメンテナンス費用など、それなりに出費が多い設備でもあるのでコストパフォーマンスの評価は必要です。また、必ずしも期待通りの水質・水量の井戸水とならない可能性もあります。井戸水と水道水それぞれの良さを踏まえた上で後悔のないよう検討してください。
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