「水道管」と聞くと小学校で見かける手洗い場のむき出しになった水道管や自宅の洗面台の下に配置されている管、道路を掘り起こすと見える管など、人によって抱くイメージは違うでしょう。読んで字のごとく水の道ですから、いずれも間違ってはいません。しかし、実際は「排水管」「給水管」など厳密に使い分けられています。
一般的に、水は浄水場から配水管で給水地区へと運ばれた後、枝分かれして各家庭の量水器(水道メーター)を通して供給されています。そこから「給水管」を通り、家の中の蛇口に水が運ばれます。水が利用できない場合は、ここまでの過程で問題が起きていると考えて間違いありません。
そして家庭内のトイレ、風呂、キッチン、洗面所などで使用した水は「排水管」によって下水処理場に送られます。この記事で扱う「水道管」は、浄水場から家庭に水を送水する管を指し、特に各家庭の蛇口につながる「給水管」について説明しています。
水道管は生活インフラの一つですから、耐久性の高い強固な金属でできているとイメージする方が多いかもしれません。
確かに、かつては鉄や鉛の水道管が主流でしたが、時代とともに錆が付かず加工しやすいプラスチック製素材や、熱に強い銅素材、新しく導入されたエルメックス素材など、水道管も使いやすく劣化しにくい材質に日々進化しています。
そのため、水道管を交換する際は業者のアドバイスを取り入れながら、予算や環境に合わせて適切な素材の水道管を選ぶことが大切です。
新しい素材の台頭によって姿を消しつつあるのが「鉄管」「鉛管」の水道管です。「鉄管」は鉄の特徴である丈夫さと耐震性があり、長らく一般的な水道管の素材として大きなシェアを占めてきました。
しかし、加工をするのに非常に手間がかかり、錆びやすいというデメリットがあります。錆がひどくなるとピンホールといわれる小さな穴が開き、そこから水漏れトラブルに発展するケースがあります。
自宅の水道管が鉄製の場合、頻繁に水漏れがするのであれば、錆による素材の劣化を疑ってもよいでしょう。
一方、「鉛管」は、加工しやすいというメリットがあるため、水道管が普及し始めた初期のころから全国的に使われてきました。
しかし、水漏れが多く、鉛が水に溶けだすなどの健康被害も懸念されるようになったため、最近は積極的な交換作業が行われています。一例ですが、東京都では平成7年3月31日をもって鉛管の使用が禁止になりました。
今でも鉛管を使っている場合、自治体によっては交換費用の補助金制度が設けられている場合もあるので、一度確認してみてください。新しい家ではまずありませんが、30年以上前に施工された家であれば鉛管が使われている可能性があるので、地元水道局や専門業者に確認してみるとよいでしょう。
以上のような理由から、長らく使われてきた「鉄管」「鉛管」は姿を消しつつあり、これから新築またはリフォームする場合に使われることはまずありません。
従来の鉄管・鉛管が減ってきた現代では、「HIVP管・ポリ管」といった樹脂製の水道管が主流です。「HIVP管」は鉄管に代わって近年比較的よく使われるタイプの水道管です。
HIVPというのは管種記号で、正式名は「耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管」です。プラスチック製の樹脂素材であるため、鉄製の水道管でたびたび起こる「錆び付き」の心配がなく、水に錆が混ざることはありません。
しかも樹脂製ですから加工も比較的容易で、施工時や修理する際の費用が安価であるというメリットもあります。
ただし、急激な温度の変化に弱い点には注意が必要です。特に水道が凍結すると割れる可能性があるため、冬の寒さが厳しい寒冷地の仕様には向いていません。また、熱で劣化が早まるため、給湯器への使用も避けた方が無難です。
メリットが多い素材ですが、設置場所を選ぶため、全てをHIVP管に変更することはできません。
こうしたHIVP管のデメリットを補える樹脂系素材が「ポリ管」です。正式名称は「ポリエチレン管」で、こちらも現在よく使われている素材です。
管と継手(つぎて)と呼ばれる部分を、接着剤やテープ、ねじを使わずに繋げられるため、取り付けや取り外しが容易で扱いやすく、振動や熱、化学物質の影響にも比較的強いというメリットがあります。地震の多い日本では振動への強さは安心材料かもしれません。
一方で価格がやや高く、太陽光にさらされると割れやすくなるというデメリットがあります。そのため、近年は「HIVP管」と「ポリ管」を場所・用途によって使い分けることが多くなっています。
給湯管に多く用いられるのは、熱耐性が高い「銅管」です。
銅管の表面は保護膜で覆われているので耐食性があり、マイナス50度程度の低温下でも使用できます。
接続する際に「はんだ付け」を行う必要があるので、工事や修理には多少手間がかかるのが難点ですが、経済的に優れています。
そのため、水道管や給湯管だけでなく、医療設備の配管などにも使われています。ただし、銅管は耐食性が高いだけで、まったく腐食しない素材ではありません。局部の腐食によってピンホールと呼ばれる小さな穴が開くこともあります。
ステンレス鋼管を使用した水道管は鉄管で起こりがちな錆の問題が起こりにくく、耐久性にも優れています。「ステンレス」はナベや包丁といった厨房機器や医療機器にも使われるほど衛生的な素材で、錆によって色のついた水が出るなどの心配は無用です。
初期費用が高い点がデメリットとして挙げられている反面、他の素材よりも劣化しにくいためメンテナンスと修理費用は軽減されるため、長期的に見れば経済的ともいわれています。
さらに、近年はゴムシール材等の活用によってジョイントの品質が均一に保たれるような工夫が進み、接合時間が大幅に短縮されたことで、かつて懸念されていた初期費用も低減されました。
リサイクル率が高く、廃棄した場合でもダイオキシンが発生しないことなどから、「ステンレス鋼管」はサステナブルな素材としても注目されています。
「エルメックス管」は近年新しく登場した素材で、水道管として使われている例はまだ多くはありません。
エルメックス管の最大の特徴は、マイナス70度程度から95度程度と幅広い温度領域での耐久性に優れている点です。そのため、凍結しても割れにくく、寒冷地でも安心して使用できます。また、塩素への耐久性も高く、水道管内が酸化しにくいので水質に関しても安心感があるでしょう。
さらに、水道管をつなぐ際は「電気融着工法」と呼ばれる専用の電気融着器を使用して電気の力で接合を行う特殊な工法が使われます。これは今までの工法と比較して水漏れがしにくいというメリットがあり、近年注目されています。
水道管の交換時期は、素材や種類、設置環境や使い方にもよるので一概に「何年」とは断言できません。何度修理しても同じような劣化の症状が現れるようになったら交換のサインと言えます。素材ごとにある程度の耐用年数が決まっているので、自宅の水道管の素材と照らし合わせてみてください。
法的な耐用年数とは減価償却を利用できる年数ですが、ここでは設備が安全に問題なく使用できる期間の目安として参考にできる数値も紹介します。製品によっては耐久性能について報告されている場合もあり、メーカーによって実使用の耐用年数が変わる点にも注意が必要です。
水道管の耐用年数を見ると、一部の素材を除いて基本的には40年が一つの目安と言えます。水道管(給水管)の多くは、地中に埋め込まれているなど目に見えない場所にあります。そのため、「錆びてきている」「穴が開きそうだな」などといった定期的なチェックができません。
耐用年数を超えていない場合でも水道水から錆が出たり水漏れが多発したりといった症状を確認したら、一度専門業者にチェックしてもらうとよいでしょう。また、特に症状が出ていなくても施工から40年近く経っている場合は点検してもらうと安心です。
ここでは一般的に交換の判断が必要な症状について紹介します。先に紹介した耐用年数と併せて目安にし、修理業者のアドバイスを参考にしながら水道管の修理に留めるか交換に踏み切るかを検討しましょう。
水漏れには大きく分けて4つの原因が挙げられます。
まず、水道管内部が劣化して錆や腐食による穴が開いている場合です。
また、地震など何らかの原因で水道管にひびが入ってしまった場合や、水道管の凍結によって水道管が破裂してしまった場合も水漏れの症状が確認できます。
これらの原因のうち自然災害によるひび程度であれば、修理でも差し支えありません。しかし、錆や腐食、水道管の破裂は交換を検討した方がよいでしょう。
それ以外にも水道管のジョイント部分が緩んでいる可能性があります。こちらはジョイント部分を締め直せば対処できるので、水道管自体を交換する必要はありません。
なお、水道管破裂などは大量に水が漏れますのですぐにわかりますが、小さな穴が開いているくらいではしばらく気づかないこともあります。
水道料金に違和感があれば、すべての蛇口をしっかりと閉めたうえで水道メーターを見てみましょう。しっかりと閉めているのに水道メーターが回っているなら、水が漏れている可能性があります。
漏水が起こっているかどうかの確認方法は下記の記事で詳しく解説していますので是非参考にしてみてください。
非常に錆びやすい鉄管を利用している場合、錆がひどくなると異臭が交換のサインになることがあります。排水溝をいくら丁寧に掃除しても異臭がするのであれば、水道管に問題がある可能性も視野に入れましょう。いずれにしても専門業者にみてもらい、異臭の原因を特定することが大切です。
水道から赤茶色のような水がでてきたという経験がある方も多いでしょう。また、目に見えない程度の濁りでも、うっかり飲んでしまうと錆びの苦い味がします。これらの症状は鉄管を利用している錆が水に溶けだしてきているサインです。
赤茶色だけでなく、白っぽい水、黄色い水、黒っぽい水など、濁った水が出てきた場合の多くは錆が原因ですから、応急措置として朝バケツ1杯ほどの水を流してから使い始めるとよいでしょう。しばらく経っても改善されない場合は専門業者に相談してください。
また、家中どこの蛇口からも同じような水が出てくる場合は浄水場から家までの水道管に原因がある可能性も否定できません。そのため、近隣の住宅で同じ症状がないかを確認しておく必要があります。
もし、自分の家の水だけが影響を受けているのであれば、全体的に水道管の内部が錆ている可能性があるので、早急に水道管の交換を検討した方がよいでしょう。
なお、稀に金属のアクセサリーやゴミが水道管に混入していて、それが錆につながっている場合があります。交換を決断する前に専門業者の点検を受けて、状況を適切に見極めましょう。
ここまで水道管を交換した方がいい目安や水道管の種類についてお話ししてきましたが、水道管交換時の費用も気になるところでしょう。業者や状況、素材にもよるので参考程度にはなりますが相場を紹介します。正確な費用については依頼予定の専門業者に見積もりをとってみてください。
ひびが入った、穴が開いたなどで一部分だけ交換する場合:1万円~1万5千円程度
水道管(給水管)全体の交換:10万円~20万円程度
排水管の交換:20万円~30万円程度
自宅の敷地内の水道管(給排水管)を交換:30~50万円程度
上記の金額は大体の目安ですが、料金の変動ポイントは水道管を交換する際に壁や床を一部解体する必要があったり、配管の位置を移動させる必要が出てきたりしてしまうといった追加工事の有無です。追加工事が必要になるケースでは水道管の工事費以外にもさまざまな費用が掛かるため、全部で100万円近くかかることもあります。
追加で料金がかかるのは心理的な負担感が大きいので、費用の見積もりを出してもらう際は、どこまでの費用が含まれているのかをしっかりと確認するようにしましょう。現場を確認した結果、実際は別の工事費用も必要になるケースもあります。
ちなみに、賃貸住宅の場合は、借主に過失がない限り大家さんが交換費用を負担するのが一般的ですから、業者に相談する前に大家さんや管理会社に連絡しましょう。
水道管の交換は頻繁に行うものではないため、いざ交換するとなると依頼先に迷ってしまう方も多いでしょう。特に信頼できる業者なのか、費用は本当に適正なのかを判断するのはなかなか難しいものです。検索した業者ホームページを見て、なんとなくよさそうだからとすぐに決めてしまうのはよくありません。
そこで、ここでは水道管を交換する際の業者選びについて、チェックするべきポイントを解説していきます。
水道工事は精密な作業を求められるので、知識と経験がものを言います。そのため、業者のホームページなどを確認し、いつから水道工事を始めているのかを確認してください。20年以上続いている業者であれば十分な経験と実績があると判断できます。
20年に満たなかったとしてもホームページ内やブログに施工例が多数掲載されていれば、実績に自信があるということですから信頼できます。
特に、これから自身が行おうとしている水道工事の内容が施工例として掲載されていれば、安心して任せられるでしょう。
また、ホームページだけでなく、口コミサイトなどで高評価が多ければ、それも信頼の指標として参考にできます。地域密着型の業者であれば、近所の方などに評判を聞いてみるのも一つの手です。
冷害や酷暑など水道管に影響する地域の問題を熟知している業者は、地域の事情に応じた提案をしてくれるので、長期的なリスクヘッジにつながります。
基本的なことですが、原則として水道管の交換工事をするには「給水装置工事主任技術者」の資格が必要です。
軽度の水漏れや水道管の接続部分の交換など、一部の工事は資格なしでも対応できますが、敷地外から水道管(給水管)を引き込む工事をするには資格が必須です。資格を持たない業者に依頼する行為は、手慣れた素人にお願いするのと同じであり、非常にリスクが高い選択であると言えます。
必ず「指定給水装置工事事業者」に認定されている業者を選ぶようにしてください。通常は各自治体のホームページに「指定給水装置工事事業者」の一覧が掲載されているので、確認してみてもよいでしょう。
水道業者に限った話ではありませんが、依頼者が納得するように、わかりやすく丁寧にしてくれるかどうかも重要なポイントです。専門用語を羅列してよくわからないまま契約をさせようとしたり、上から目線で話したりするような業者への依頼はトラブルになりやすいものです。
不明点があった際に質問をしやすい雰囲気があり、なおかつ納得できる回答がもらえる業者は信頼できます。水道管の交換は決して安い買い物ではありません。「ちょっとよくわからないけど、まぁいいか…」などと妥協せず、納得がいくまで質問しましょう。
工事内容の詳細が記載された見積書を発行してくれる点も、業者を選ぶ際に重視したいポイントです。ついなおざりにしがちな部分ですが、「水道工事一式」などと詳細が書かれていない明細が発行された場合は、本当に適正な価格なのかがわかりません。
きちんと工事費用と使う予定の部材の費用、場合によっては時間の割増料金や出張費用まで、発生する可能性がある費用が細かく書かれていることを確認しましょう。
業者を選ぶ際は、少なくとも3社以上に見積もりをだしてもらうことがおすすめです。明細がわからなければ、比較する際も料金の差がどこにあるのかがわかりません。
合計金額だけ見て安いと思っても、実は水道管の交換以外に必要な工事部分が入っていなかったり、逆に高いと思ってもアフターケアの費用までしっかりと組み込まれていたりなど業者によって差があります。
詳細が記載されていないと後々トラブルになる可能性もあるので、詳細が記載されていない場合は、詳細を入れたうえで出し直してもらってください。
また、出張・見積もりに料金が発生するかどうかもポイントです。料金がかかる場合はその分もきちんと見積もりに入れてもらいましょう。ただし、通常はそこまで遠い場所の業者を選ぶことは少ないはずです。
見積もりが無料の業者が増えているので、基本的には出張・見積もりが無料の業者を選ぶことをおすすめします。見積もりが有料の場合「せっかくお金を払って見積もりを出してもらったので…」と疑問があっても妥協してしまうことにもなりかねません。
いくつか見積もりをお願いする中で、明らかに安かったり、高かったりすることがあります。特に他と比べて明らかに安すぎる場合は要注意です。本当に間違いがないか、後からオプションを勝手につけられることがないかなど、しっかりと確認してください。
ある程度はホームページで確認できますが、納得がいかない場合は他の業者に「この料金を提示されたのですが」と相談してみてもよいでしょう。逆に高すぎる場合も、その理由を尋ねて構いません。
これはアフターケアをしっかりしてくれるかという部分にもつながりますが、水道周りで問題が起きた時は緊急時であることがほとんどなので、連絡がつきやすい業者を選ぶことも大切です。
水道管の交換はいくつもの工程が必要な工事ですから、すぐに問題が起きるケースは少ないかもしれませんが、それでも何らかの不具合が起きる可能性はあります。
特に全交換でなく、一部のみの交換をした場合、ジョイント部分の接合が甘かったなどの理由で水漏れするケースがないとは限りません。問題が起きた際に、すぐに連絡がついて早急に対応してくれる業者を選ぶと安心です。
ホームページでよさそうな業者を見つけても、家から遠く工事対応外であったり、対応してくれる場合でも出張費が別途かかってしまい、合計の費用が跳ね上がってしまったりすることがあります。また、工事後に何か問題があった際に、距離的な問題からすぐに対応してもらえないこともあります。
逆に地元に近い業者であれば、何かあった際の対応も迅速ですし、出張費もかからず、地域の地理や水道事情に熟知していることが多く安心感があります。全国に展開している大きな会社も、各地に営業所があるので対応は迅速でしょう。
水道管の耐用年数は先に説明した通り、40年ほどです。しかし、利用状況や自然災害などで実際には耐用年数よりも早く劣化してしまうこともあります。水漏れが直らない、異臭がする、色のついた水が出るなど、いつもと違うなと感じたときは早めに「指定給水装置工事事業者」に相談してみてください。
まずは状況を確認してもらい、工事が必要な場合は、一部でいいのか全体の水道管を交換する必要があるのかの判断を仰ぎましょう。
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